仕事とお金と人生と~わたしの外資人事30年史

外資人事マネジャーが人事業務と人のつながりまで、リアルな姿を綴ります

英語面接は準備9割──優秀な候補者が落ちた理由

ある優秀な候補者の話

「彼は国立大理系出身、30代前半。人柄もよく、経験も十分。日本側では"この人だ"と思っていた──英語面接までは。」

 

もうだいぶん前の話です。
実際にね、すごくいい候補者がいたんです。日本側ではこの人だなって思ってたんだけど、英語面接で撃沈よ。本当になにも準備してこなかったのね。

経験もあり、日本語での面接では人柄もよく、即戦力でもあるし将来の幹部候補にもなると思われた候補者でした。技術的な知識も申し分なく、プロジェクト経験も豊富。まさに「完璧な候補者」だったんです。

 

ところが…海外本社のマネジャーが英語でweb面接をしたわけですが、その候補者は質問が聞き取れなかったんですね。一緒に面接に入った採用部署のマネジャーが質問を訳して、そうしたら彼は英語で答えてはいたんだけど、それもつっかえつっかえ。最後には話せなくなっちゃっていました。

本社側の印象が悪くて、結局採用見送り。本社側はがっかり、日本側の採用部署も人事もがっかりですよ!

 

その人は英語力については自信があって、「なんとかなる」って思っていたようです。私も「大丈夫かな?」と思いながらも、それ以上のアドバイスはしなかったのが失敗だったな。

 

英語面接は"言語力"だけではない

外資を受けるときに、英語が喋れないのに喋れる気がすると思って全然準備してこない人、結構多いんです。特に男性にそれが多い。確かに高学歴だけど、全然仕事で喋ったことがない。だけど文献で専門用語は見てるから喋れるって思うのかな?散々な結果になることはよくありました。

 

まず、やっぱり英語で会話したことがないから、相手の質問が聞き取れないんです。

かつ、聞き取れたとしても専門用語の単語はわかるんだけど、専門用語の羅列だけでは会話にならない。普通、面接って質問を重ねていくじゃないですか?どんどん細かい話になっていくから、英語ができる人だってそこそこ準備してのぞむのよね。

 

問題はここなんです。面接は「一問一答」ではなく「対話のキャッチボール」。相手の質問の意図をくみ取って、適切に答え、さらに会話を発展させていく必要があるんです。

特に、外国人との会話で何が難しいって、文化の違いとか習慣の違いで、思ったこともないようなベクトルから質問されたりするので、その意図をくみ取って会話するのは、もう結構大変。

TOEIC700点取ってても、リーディングとリスニングだけじゃ会話はできないんですよ。

 

外資面接の"変数"の多さ

そもそも面接って、変数多すぎるんです。

  • 面接官の価値観:どんな人材を求めているか、どんな質問をするか
  • 会社・部署のカルチャー:チームワーク重視か、個人の成果重視か
  • 業界特有の慣習:化学業界なら安全への意識、製薬なら規制への理解など
  • 海外文化という未知の要素:そもそも「当たり前」が違う
  • そして言語という壁:理解→思考→表現のすべてを英語で

うちは面接官も化学出身だったりすることが多いので、まあ質問が細かい細かい。技術的な詳細から、なぜその手法を選んだのか、他にどんな選択肢があったのか、失敗した経験とそこから学んだことは何か...と続いていきます。

この複雑な構造の中で、「なんとかなる」はあまりに危険な賭けなんです。

日本語でも緊張する面接で、さらに英語という高いハードルが加わる。準備不足で臨むのは、まさに「無謀」としか言いようがありません。

 

人事としての反省と教訓

優秀な候補者を失ったとき、私自身も反省しました。

候補者の英語力への過信がありました。履歴書にはTOEIC700点と書いてあったし、専門知識も豊富だったから、「まあ大丈夫でしょう」と思ってしまった。

でも考えてみたら、その人が英語で仕事の話をしたことがあるかなんて、確認してなかったんです。論文は読めても、プレゼンテーションした経験があるかはまた別の話。

「大丈夫かも」と思ってしまった人事側の油断が、結果的に候補者にとっても会社にとっても良くない結果を招いてしまいました。

 

それ以来、私は候補者には必ずこう伝えるようになりました:

「英語面接は準備9割です。日常的に英語を使っていないなら、なおさらです」

女性の場合は逆に準備しすぎて、紙に書いたものを読み上げる感じになっちゃったりすることもあるんですが、それでも準備不足よりは100倍マシ。少なくとも伝えようとする意志は伝わりますから。

 

準備のすすめ:英語面接対策の基本

英語面接は、もう準備9割だと思ってください。

まず、書けない言葉は話せないから、自分の英語で書きまくることから始めましょう。

ステップ1:書き出す・・・もちろん自分の英語で!

  • 自己紹介:30秒版、1分版、2分版を用意
  • 志望動機:なぜこの会社なのか、なぜこの職種なのか
  • プロジェクト説明:最も重要な3つのプロジェクトを英語で説明できるように
  • 強み・弱み:具体例とともに
  • キャリアプラン:5年後、10年後の目標

ステップ2:覚える

書いたものを丸暗記する必要はありませんが、キーフレーズは自然に出てくるまで練習しましょう。

ステップ3:話す練習

鏡の前で話すだけでも違います。可能であれば録音して、自分の話し方をチェック。

ステップ4:模擬面接

英語の先生、英語が得意な同僚、オンライン英会話の先生など、誰かに相手になってもらいましょう。

ステップ5:質問の"意図"をくみ取る練習

「Tell me about a challenging project」と聞かれたとき、単にプロジェクトの内容を説明するだけじゃダメ。どんな困難があって、どう乗り越えたか、そこから何を学んだかまで話せるように。

よくある質問パターンを調べて、それぞれの質問の裏にある意図を理解することも大切です。

日常的に英語を使っていない人への特別アドバイス

もし普段英語を使わない環境にいるなら、面接の1か月前からは毎日少しでも英語に触れること。BBC Newsを聞く、TED Talksを見る、英語で独り言を言う...何でもいいから英語脳を少しでも作っておく。

ちなみに普段アジアの同僚と話す機会の多い私も、早口の彼らの英語を聞き取るために毎日Duolingoを欠かしておりません。

 

英語面接は"言語力"より"対話力"

結局のところ、英語面接で問われているのは「英語が話せるかどうか」ではなく、「英語で会話ができるかどうか」なんです。

相手の質問を理解し、適切に答え、さらに会話を発展させていく。時には逆質問をして、こちらの関心も示す。これは高度なコミュニケーション能力が必要です。

TOEIC900点でも面接で落ちる人がいる一方で、TOEIC600点台でも準備をしっかりして、面接官との対話を楽しめた人は通過していきます。

語学力は一朝一夕では身につかないけれど、面接スキルは準備次第で大きく改善できます。

 

あの優秀な候補者も、もし1か月前から準備していたら、きっと違う結果になっていたでしょう。技術力も人柄も申し分なかったのに、準備不足だけで機会を失ってしまったのは、本当にもったいなかった。

反対に、面接では準備した紙を読み上げて入社した女性が、入社後も努力しつづけ管理職に昇格し、かつ当時の面接官から「こんなに英語が上達するとは思わなかったよ」と褒められたという例もあります。

 

外資系企業への転職を考えている皆さん、英語面接を甘く見てはいけません。「なんとかなる」ではなく、「絶対に成功させる」つもりで準備してください。

あなたの専門性と経験は、きちんと伝わってこそ価値があります。英語という壁で、せっかくのチャンスを逃さないよう、しっかり準備して挑んでくださいね。

 

2019年8月の上海出張。これも楽しかったなあ