「今こうやって無駄な時間を過ごしている意味がわからない」
海外出張時、チームビルディングの場で、海外大卒の若手社員がこう言い放ったことがありました。アジアの同僚たちで集まって、これからチームとして働いていこうという大切な時間だったんですけどね。
もちろん、彼の英語は完璧でした。流暢で、文法も発音も申し分ない。でも、その場の空気を読む力が足りなかった。うちの会社の文化では、そこまではっきり言わないんです。特にチームの和を大事にする場面では、あいまいなまでに丁寧な言い方をするのが暗黙のルールなんですよね。
この出来事が、私に教えてくれました。外資で必要なのは「完璧な英語力」じゃない。英語で「何を通すか」「どう伝えるか」なんだって。
昔は「英語は使いませんよ」と言われた
「外資に転職したいけど、英語が不安です」
そんな声をよく聞きます。たしかに、今の外資は英語ができないと厳しい。でも、私が外資に転職したときは、TOEIC500点台でした。しかも、英語はほぼしゃべれませんでした。
27歳で今の会社に転職したとき、面接で言われたのは「英語は使いませんよ」。
実際、当時の私の担当は給与業務。社内に外国人は社長ひとりしかいなかったし、わたしが英語を使う場面はゼロだったんです。
前職も外資だったんですけど、日本の商社が50%出資していて、社内は完全に日本語環境。外資といっても、英語が必要ない会社は確かに存在していました。給与担当の経験さえあれば採用された時代だったんですよね。
当時を思い出すと、本当に牧歌的だったなって思います。もうね、書くのが恥ずかしいくらい昔なんですけど、手紙がメイン、やっとテレックス(!)が導入されたってくらいの時期だったんですよ!返信に数日かかっても全然問題なかったんですよね。英語ができなくても、専門性さえあれば仕事は回っていたんです。
今は「どんなポジションでも英語必須」になった
でも、今は全く違います。採用面接でも、どんなポジションでも英語力は必ず確認されます。
理由はシンプルで、スピードと情報量が桁違いになったから。
アジアとのやりとりはchatで即時対応が当たり前。本社には朝メールを送ったら、時差の関係で夜には返信が来て、翌朝にはミーティングが設定されている。資料も会議も英語が基本。外国籍の社員も増えて、廊下での立ち話も英語でするようになりました。
私が入社したころはレポートだって部長が作成していたので、私はデータ作成だけしてればよかったわけですが(しかもLotus1-2-3で💦)、いまは質問があれば直接担当者にchatが飛んできて、即座に答えないといけないんです。
「英語は使いません」なんて言える時代じゃなくなりました。給与担当だろうが、総務だろうが、営業事務だろうが、英語でコミュニケーションを取る機会は必ず出てきます。
私自身、入社当時はTOEIC500点台だったのに、今では海外とミーティングをしたり、日本の報酬制度に沿った設定をグローバルシステムに落とし込む交渉をしたりしています。正直、27歳の自分に「将来こうなるよ」って言っても信じなかったと思います。
TOEICの点数より「通す力」が必要
とはいえ、英語力イコールTOEICの点数ではないんですよね。これは本当に声を大にして言いたい。
TOEICの点数を伸ばす努力は、もちろん意味があります。読み書きの力はつくし、基礎的な語彙も増える。でも、ミーティングで発言する力、自分の意見を通す力は、また別物なんです。
たとえば私の場合、グローバルシステムを使っての昇給プロセスについて説明を受けながら、「それだったら昇給のマトリックス表を管理職用と非管理職用の2種類作る必要がある」って主張しなきゃいけませんでした。頭の中では日本の制度と運用、グローバルシステムの流れ、そしてここで理解してもらわなきゃ、しかも英語で…!っていう沸騰状態だったんです。
そういうとき必要なのは、完璧な英語じゃないんですよ。「なぜ必要なのか」を論理的に説明して、「これは譲れない」という姿勢を示す力。つっかえつっかえでも、恥をかいてもいいから、その場で確認すべきことは確認する。通すべきことは通す。そういう根性のほうが大事なんです。
私の上司で、シンガポールに数年赴任していた人がいるんですけど、その人ですら「俺、サバイバルイングリッシュだから」って言ってました。海外の大学を出た人は確かに流暢だけど、日本で大学を出た私たちはサバイバルイングリッシュ。でも、それで十分なんですよね。
実際、海外大卒でペラペラしゃべれる人が、冒頭のエピソードみたいに会議の雰囲気を感じ取れずに失礼なことを言ってしまうケースもあります。英語ができるだけじゃ足りない。会社のカルチャーや場の空気を読む力、そして自分の主張を通す交渉力が必要なんです。
英語は"ツール"、大事なのは「何を伝えるか」
英語って、直接的に思えて、実ははっきり言わないですよね。というか、あいまいなまでに丁寧な言い方をするときがある。
たとえば、誰かの提案に問題があっても、「それは違う」とは言わないんです。「興味深いアイデアですね。ただ、こういう側面も考慮する必要があるかもしれませんね」みたいな言い方をする。
外資だからバシバシものを言うイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。「外国人」っていってもいろんな国の人がいるし、会社ごとにカルチャーがある。うちの場合は、調和を重視する文化なんですよね。
だからこそ、英語でも「言いすぎない」「察する」力が必要になります。相手の言葉の裏にある本音を読み取る。空気を読んで、適切なタイミングで発言する。これって、高度な英語力以上に難しいスキルだと思います。
結局、英語はツールでしかないんです。大事なのは、その場で何を通すか。何を守るか。何を伝えるか。完璧な文法じゃなくても、自分の言葉で仕事を前に進められるかどうか。それが外資で生き残るための本当の英語力なんじゃないかなって思います。
英語は後からついてくる、まずは「通す力」を
私はTOEIC500点台で外資に転職しました。
入社当時は英語は不要でしたが、外資あるある、それから30年の間に何回か合併があり、社名も当時のものではありません。そしてカルチャーもわたしの立場も変わり、海外出張も増えました。
英語のミーティングでは、最初何を言ってるのか半分もわからなかった。でも、わからないことは「もう一度説明してください」って聞き返したし、自分の意見は片言でも伝えようとしました。恥ずかしかったけど、黙っているよりはマシだって思ったんです。
最初は本当に大変でした。もう嫌だ~とか叫びながらTOEICの勉強もしたし、会議の前には想定される質問と答えを英語で書いて準備したし、議事録を読み返して知らない単語を調べる日々。もうそれしかできなかったもんなあ…。
でも、そうやって続けているうちに、少しずつ聞き取れるようになって、言いたいことが英語で出てくるようになりました。TOEICも880点にまでなりました。
今でも流暢には程遠いです。文法の間違いもするし、言葉に詰まることもあります。でも、報酬制度の交渉もできるし、本社とのミーティングもこなせるようになりました。英語は、使っていれば後からついてくるんです。
もしあなたが外資への転職を考えていて、英語に不安を感じているなら、まずは自分の専門性と「通す力」を磨いてください。
完璧な英語じゃなくていい。TOEIC900点じゃなくていい。恥をかいてもいいから、確認すべきことは確認する。通すべきことは通す。そういう姿勢があれば、外資でもやっていけます。
英語はツール。大事なのは、そのツールを使って何を成し遂げるか。あなたの専門性と経験、そして仕事を前に進める力があれば、英語なんて後からついてきますから。
