仕事とお金と人生と~わたしの外資人事30年史

外資人事マネジャーが人事業務と人のつながりまで、リアルな姿を綴ります

LinkedIn、放置してない?外資人事が教える「検索される職歴」の書き方

LinkedIn、登録しただけで満足してませんか?

「LinkedInって登録したけど、なんとなく放置してる」 「英語だし、何書けばいいかわからない」 「そもそも見てる人いるの?」

 

外資の人事をやっていると、こういう声、本当によく聞くんです。特に日本のビジネスパーソンの方、もったいないなって思うことが多くて。

 

でもね、実は外資系企業の人事やエージェントは、あなたが思っている以上にLinkedInで候補者を「検索」しているんですよ。そう、検索エンジンググるみたいに、毎日毎日、条件に合う人を探してるんです。

 

私自身、LinkedInで候補者を探すことはしょっちゅうです。「この案件、どんな人がいるかな」って思ったら、まずLinkedInで検索。特にシニアポジションや専門性の高い職種になればなるほど、LinkedInは欠かせないツールなんです。

 

安斎響市さんという方のNoteでは、4回の転職でLinkedInを活用して年収が450万円から1,500万円以上になった実体験が紹介されていました。特に3回目と4回目の転職がLinkedIn経由だったそうです。検索に引っかからなければ、どんなに優秀でも見つけてもらえないんです。

 

note.com

 

LinkedInは"公開職歴書"

まず大前提として、LinkedInと履歴書は別物だって理解することが大事です。

 

履歴書は、応募した企業に提出するもの。相手が決まっていて、その相手に向けて書くものですよね。

 

でもLinkedInは、世界中に公開する職歴書。しかも「検索される」ことを前提に設計されているんです。

 

外資系企業の人事やリクルーターは、日々LinkedInで候補者を探しています。グローバルな大企業になればなるほど、LinkedInを使っていない会社なんてないと言っていいくらい。私が働いていた化学メーカーでも、本社の採用チームは毎日LinkedInで検索してました。

 

そして、ここがポイントなんですが、シークレット案件(非公開求人)は、LinkedIn経由で声がかかることが本当に多いんです。

 

求人サイトに出ている案件って、実は氷山の一角。本当においしい案件、つまり重要なポジションや高給のポジションほど、公開されずに「この人」って思った候補者に直接声をかけるケースが多いんですよね。

 

2008年からLinkedInを採用活動に使ってきた方が「一度作り込めば、待っているだけでもスカウトが届く」と紹介されているブログもありました。履歴書を一から作り直す必要もなく、カジュアル面談から始まることが多いので、転職活動の労力が圧倒的に少なくなるそうです。

 

blog.miraishumbo.com

 

外資の会社に直接見つけてもらえなくても、エージェントに見つかるだけでもシークレット案件に応募できる可能性が出てくる。これ、すごく大きいと思いませんか?

 

検索に引っかかる職歴の書き方

さて、ここからが本題です。

 

多くの人が「人事部長」「営業マネージャー」みたいな肩書きだけ書いて終わりにしてるんですけど、これじゃあ検索に引っかからないんですよ。

 

なぜかというと、リクルーターが検索するときって、肩書きじゃなくてキーワードで検索するから。

 

例えば、人事のポジションを探すとき、私だったらこんな感じで検索します:

  • 「compensation design」(報酬制度設計)
  • 「performance management」(人事評価制度)
  • M&A PMI」(M&A後の統合)
  • 「grading system」(グレーディング制度)
  • 「talent acquisition」(採用)

 

つまり、具体的なスキルや経験、プロジェクトの内容を検索してるんです。「人事部長」だけだと、あなたが何をしてきた人事部長なのか、全然わからないんですよね。

 

外資転職ドットコムでは「LinkedInは職務経歴書として機能する」と解説されていました。プロフィールは「役割+達成したこと+学んだこと」を具体的に書くことが重要で、スキルに対する他のユーザーからの推薦(エンドース)をもらうことも可能だそうです。検索されるためには具体性が必須なんです。

 

gaishitenshoku.com

 

職歴には"4つの要素"を入れよう

私がいつも候補者の方にアドバイスしているのは、職歴に以下の4つの要素を入れることです:

  1. 役割:何を担当したのか
  2. 成果:どんな結果を出したのか
  3. スキル:どんなスキルを使ったのか
  4. 規模感:どれくらいの規模のプロジェクトだったのか

 

具体例を見てみましょう。

❌ダメな例 「人事制度の見直しを担当」

これだと、何をしたのか全然わからないし、検索にも引っかかりません。

✅良い例 「グレーディング制度の導入プロジェクトをリード(全社500名対象)。等級定義の策定、報酬バンドの設計、移行プランの作成を担当。導入後、人件費の透明性が向上し、従業員満足度調査で報酬への満足度が15%改善」

 

どうですか?全然違いますよね。

この書き方だと、「grading system」「compensation design」「organizational design」といったキーワードで検索されたときに、あなたのプロフィールがヒットするんです。

しかも、数字が入ることで説得力が増す。500名の規模感、15%の改善という具体的な成果。これがあると、リクルーターの目に留まります。

 

職歴は箇条書きで、検索キーワードを意識して

LinkedInの職歴欄は、長々と文章を書くより、箇条書きで書く方が読みやすいし、検索にも引っかかりやすいです。

 

各ポジションで、3〜5個くらいの箇条書きで、主要なプロジェクトや成果を書きましょう。

 

そして、ここが大事なんですけど、検索されそうなキーワードを意識して書くこと。

外資に転職したいと思っているなら英語で。

例えば、営業なら:

  • 「新規顧客開拓」じゃなくて「New business development」
  • 「売上目標達成」じゃなくて「Achieved 120% of sales target」
  • 「大手企業との契約」じゃなくて「Closed deals with Fortune 500 companies」

人事なら:

  • 「採用活動」じゃなくて「Talent acquisition and recruitment」
  • 「研修企画」じゃなくて「Learning & Development program design」
  • 労務管理」じゃなくて「HR operations and employee relations」

エンジニアなら:

  • システム開発」じゃなくて「Software development using Python, AWS, React」
  • 「チームリーダー」じゃなくて「Led a team of 5 engineers in agile environment」

英語で、かつ具体的に書くことで、検索される確率がグッと上がるんです。

 

英語プロフィール、怖がらなくていいんです

「でも、英語で書くのが不安で...」って声、本当によく聞きます。

気持ちはわかります。私も最初は「こんな英語で大丈夫かな」って思ってましたから。

 

でもね、完璧な英語じゃなくていいんです。伝わる英語でOK。

リクルーターが見ているのは、あなたの英語力じゃなくて、何をしてきたかなんです。多少文法が間違っていても、やってきたことが明確に書かれていれば、それで十分。

 

実際、私がLinkedInで見つけて声をかけた候補者の中にも、完璧じゃない英語の人はたくさんいました。でも、プロフィールから「この人、すごい経験してるな」って伝わってくれば、それでいいんです。

 

むしろ、完璧な英語を目指して何も書かないより、多少不完全でも書いてある方が100倍いい。

こちらのブログではかなり細かく書いてありますね。

LinkedInを英語で使いこなすことで毎週のようにリクルーターから声がかかるようになり、今では転職サイトを一切使わずに職業選択の自由を獲得していると紹介されていました。英語でのプロフィール作成が重要で、転職活動をしていない間も情報収集の場として機能するそうです。

 

blog.miraishumbo.com

英語で職歴を書くヒント

英語で書くとき、こんな感じでシンプルに書けば大丈夫です:

基本パターン

  • Led [プロジェクト名] for [対象/規模]
  • Managed [何を] resulting in [成果]
  • Developed [何を] to achieve [目的]
  • Implemented [施策] which improved [指標] by [数字]

 

具体例

営業:

  • "Led enterprise sales team of 8 members, achieving 150% of annual target (¥500M)"
  • "Developed strategic partnerships with 3 major automotive manufacturers"

人事:

  • "Implemented new performance management system for 300+ employees"
  • "Redesigned compensation structure, resulting in 20% improvement in employee retention"

エンジニア:

  • "Led development of customer-facing web application using React and Node.js"
  • "Managed migration from on-premise to AWS cloud infrastructure"

 

こんな感じで、動詞から始めて、何をして、どんな結果が出たかを書く。これだけでOKです。

Google翻訳やDeepLを使ってもいいんですよ。ただ、そのまま使うんじゃなくて、翻訳結果をちょっと自分で見直して、「これで伝わるかな」って確認すること。

 

LinkedInは"棚卸しツール"でもあります

ここまで読んでくださってありがとうございます。

 

最後に、私がLinkedInについて一番伝えたいこと。

LinkedInって、自分の職歴を言語化することで、自分の強みや再現性が見えてくるツールでもあるんです。

 

職歴を書くとき、「あれ、自分って何してきたんだっけ?」って考えますよね。そのプロセス自体が、すごく価値があるんです。

 

「あのプロジェクトでは、こういう役割だったな」 「この成果は、こういうスキルがあったから出せたんだな」 「自分の強みって、こういうところかも」

書きながら、自分のキャリアが整理されていく感覚、わかりますか?

そして、それが言語化できると、面接でも使えるし、上司との面談でも使えるし、自分のキャリアプランを考えるときにも使える。

 

あなたの経験は、誰かにとって"探していたピース"かもしれません。

「LinkedIn、なんとなく登録してるだけ」って人ほど、もったいない。

まずは、職歴を"検索される言葉"で書き直してみませんか?

 

完璧じゃなくていい。まずは1つのポジションから。具体的に、数字を入れて、キーワードを意識して書いてみる。それだけで、あなたが見つけてもらえる確率は何倍にもなります。

グローバルの大きい企業ほど、LinkedInを使っています。肩書だけじゃなく、やってきたことを細かく書く。それが、あなたの次のチャンスにつながるかもしれません。

 

さあ、今日からLinkedIn、本気で使ってみませんか?


このブログが少しでもお役に立てたら嬉しいです。外資転職やキャリアについて、また書いていきますね。質問やリクエストがあれば、ぜひコメントで教えてください!

ジョブ型の"ポジション"と"グレード"──外資人事が語る昇給の仕組み

最近、ジョブ型雇用への移行を発表する日本企業が増えてきました。「成果主義が厳しくなるのでは?」「今の仕事は評価されるのか?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

 

外資系企業で人事の仕事をしている私から見ると、ジョブ型への不安の多くは「仕組みがよくわからない」ことから来ているように思います。特に、ポジションとグレードの関係性を理解していないと、昇格や昇給の仕組みが見えてこないんですよね。

 

今回は、ジョブ型雇用における昇給・昇格の仕組みを、できるだけわかりやすく解説します。製造業での具体例も交えながら、「なんとなく怖い」を「仕組みがわかれば対処できる」に変えていきましょう。

 

ジョブ型とは何か?

まず基本から整理しましょう。ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)に対して人を割り当てる雇用システムです。

 

従来の日本企業で主流だったメンバーシップ型は、「人」を採用してから仕事を割り振る方式でした。新卒一括採用で「総合職」として入社し、配属や異動を繰り返しながらキャリアを築いていく。多くの方にとって馴染み深いスタイルですよね。

 

一方、ジョブ型では「仕事」が先にあります。組織図に「品質保証課長」というポジションがあり、そのポジションに必要な職務内容を定義した「職務記述書(Job Description)」を作成し、それに適した人をアサインする。順番が逆なんですよね。

 

ここで重要なのは、ジョブ型=成果主義ではないということ。ジョブ型はあくまで「どんな仕事をするか」を明確にする仕組みであって、成果主義とは別の概念です。ただ、職務が明確になることで成果も測りやすくなるため、セットで語られることが多いんですよね。

 

用語の整理:ポジションとグレードの関係性

ジョブ型を理解する上で、絶対に押さえておきたいのが「ポジション」と「グレード」の違いです。外資系企業で働いている人でも、この2つがごちゃごちゃになっている人は意外と多いんです。

 

ポジションとは

ポジションは、仕事をする「椅子」のことです。組織図上に定義された役割で、定員があります。

例えば製造業なら:

  • 生産管理課長(1名)
  • 品質保証係長(2名)
  • 製造班長(5名)

これらがポジションです。組織図に描かれている箱一つ一つが、ポジションだと思ってください。

 

グレードとは

グレードは「等級」のことです。職務の責任や難易度に応じて、Grade 1からGrade 12のように階層が分かれています(会社によって段階数は異なります)。

そして重要なのが、グレードごとに給与バンドが設定されているということ。例えばGrade 8なら年収700万円〜900万円、Grade 9なら800万円〜1,100万円、といった具合です。

 

ポジショングレードとパーソナルグレード

ここからが少しややこしいのですが、グレードには2種類あります。

 

ポジショングレードは、ポジションに紐づくグレードです。「品質保証課長というポジションはGrade 9相当の職責である」というように、ポジションを設計する時点で決まっています。

 

パーソナルグレードは、個人に紐づくグレードです。その人の職責やパフォーマンスによって変動します。

 

例を挙げましょう。

品質保証課長(ポジショングレード:Grade 9)のポジションに、係長レベルのグレード(パーソナルグレード:Grade 7)を持つAさんがアサインされたとします。

この場合、すぐにAさんのパーソナルグレードをGrade 9に引き上げることもあれば、「まずは様子を見よう」ということで当面はGrade 7のまま課長職を任せることもあります。後者の場合、半年後や1年後の評価を経て、正式にGrade 9へ昇格する、という流れになるんですね。

 

昇給・昇格の仕組み

ここまでの理解を前提に、昇給と昇格の仕組みを見ていきましょう。

 

スタッフ職は職務給と職能給のブレンド

実は、外資系企業でもスタッフ職(非管理職)は、職務給と職能給を組み合わせた運用をしているケースが多いんです。

製造現場のオペレーターや、ホワイトカラーの一般社員レベルであれば、ポジションの空きを厳密に問わず、パフォーマンス次第でグレードが上がることがあります。「今年は成果を出したからGrade 5からGrade 6へ」といった昇格ですね。

 

つまり、スタッフ職の段階では、メンバーシップ型的な職能給の要素が残っているんです。これは、業務の幅が広く柔軟な対応が求められるスタッフ層では、厳密なジョブ型を適用しにくいという現実的な理由があります。

 

管理職以上はポジション依存が強い

一方、班長以上、係長以上、そして課長以上の管理職については、組織図上のポジション数が厳密に決められています

なぜなら、管理職ポジションは「何人のメンバーを率いるか」「どの範囲の予算責任を持つか」が明確に定義されているからです。組織図に「製造班長5名」と書いてあったら、どんなに優秀な人がいても6人目の班長は生まれません。

 

つまり、管理職への昇格には「ポジションの空き」が必須なんです。これがジョブ型の大きな特徴であり、多くの方が不安を感じるポイントでもあります。

 

ジョブ型に不安を感じる中堅社員の疑問に答える

ここからは、よくある質問に答えていきます。

 

Q1. 今の仕事ってジョブ型でどう評価されるの?

ジョブ型では、職務記述書(Job Description)に書かれた職責で判断されます

例えば、あなたが生産技術の担当者だとしましょう。職務記述書には「製造ラインの改善提案と実行」「新規設備導入時の技術検証」などが書かれているはずです。評価される のは、この職務記述書に書かれた範囲をどれだけ成果を出して遂行したかです。

逆に言えば、職務記述書に定義されていない仕事をどれだけ頑張っても、評価対象外になる可能性があるということです。

「何でも屋」として様々な業務を引き受けてきた方にとっては、これが不安材料になるかもしれません。ただ、職務記述書の範囲は定期的に見直されますし、組織の状況に応じて柔軟に更新されるものです。過度に心配する必要はないでしょう。

 

Q2. グレードが上がっても給与が上がらないことってある?

あります。

先ほど説明したように、グレードごとに給与バンドが設定されています。例えばGrade 7で年収650万円の人がGrade 8に昇格したとしましょう。Grade 8の給与バンドが600万円〜850万円だった場合、すでに650万円はバンド内に収まっているので、昇格しても給与は据え置きということがあり得るんです。

もちろん、多くの企業では昇格時に一定の昇給を行いますが、グレードが上がる=必ず給与が大きく上がる、ではないことは知っておいた方がいいでしょう。

特に、給与バンドの上限近くまで到達している場合、それ以上の昇給を望むなら、次のグレードへの昇格が必要になります。これが「ポジションの空き」の問題と直結してくるわけです。

 

Q3. 昇格のためには何が必要?

昇格の評価基準として、多くの外資系企業では「ヘイのガイドチャートプロファイル法」という手法、あるいはそれに準じた手法を参考にしています。これは職務を数値化して評価する方法で、3つのカテゴリで構成されています。

1. 知識・経験 その職務に必要な専門知識や経験の深さです。製造業なら、品質管理の専門知識、特定の製造プロセスへの精通度などが該当します。

2. 問題解決 直面する課題の複雑さと、それを解決する能力です。定型的な問題を扱うのか、前例のない課題に取り組むのか、という違いですね。

3. 達成責任 その職務が組織に与える影響の大きさです。担当する予算規模、意思決定の範囲、率いるチームの規模などが評価されます。

つまり、昇格を目指すなら知識・経験を増やす、難しい課題を解決する、より上のポジションで責任を負うことが重要になります。

ただし繰り返しになりますが、これらを満たしてもポジションの空きがなければ昇格はできません。これがジョブ型の現実です。

 

ジョブ型で生きるための視点

ここまで読んで、「やっぱりジョブ型は厳しそうだ」と感じた方もいるかもしれません。

でも、考え方を変えてみてください。ジョブ型は「何が評価されるか」が明確なシステムです。職務記述書を見れば自分の仕事が定義されています。

メンバーシップ型の「会社への貢献」「チームワーク」といった抽象的な評価基準に比べて、やるべきことが見えやすいとも言えるんです。

 

もちろん、ポジションの空き待ちという制約はあります。でも、それは「運」だけの問題ではありません。組織の動きを見て、どのポジションが空きそうか、そのポジションに求められる要件は何かを戦略的に考えることができます。

ジョブ型は「制度」である以上に「戦略」です。自分の職務を理解し、グレードの評価基準を把握し、ポジションの動きを見極める。この視点を持つことが、ジョブ型時代のキャリアの鍵になると私は考えています。

漠然とした不安は、仕組みを理解することで和らぎます。

この記事が、その一助になれば幸いです。

 

上海も6年行ってないなあ…

 

面接で人事が見ていること──過去の真実味と第一印象

こんにちは、SHIZです。今日は面接について書いてみようと思います。

これは外資とか関係ない話なんですけど、人事が面接で何を見ているのか、リアルなところをお話ししますね。

 

はじめに:面接は"中身"だけじゃない

よく「面接は中身が大事」って言われますよね。もちろんそうなんですけど、実際には第一印象で落とすこともあるんです。これ、本当に。

昔、ヨレヨレの背広で来た人がいたんですよ。もう第一印象の時点で「これはないな」って思っちゃって。結局その人は落としました。

飾りの長いピアスなど、アクセサリーをつけすぎている女性の方もいましたね……。いや、入社してからは金髪だろうがアクセサリーが多かろうが、私は全然気にしないんです。そこはどうでもいいと思ってます。気にする人もいるでしょうけどね。

でも、面接では気をつけてほしいんですよ。なぜかって、面接は"初対面の場"だから。相手がどう感じるかを意識することが、社会人としての基本的な姿勢だと思うんです。

 

第一印象は「準備してきたか」が見える

第一印象って、清潔感、身だしなみ、話し方、すべてがその人の「この場をどう捉えているか」の表れなんですよね。服がシワシワだったり、寝癖がついてたり、そういうのって「準備不足」に見えちゃうんです。

もし紹介エージェントを使っているなら、少なくとも自分の印象について見てもらうべきですね。客観的なフィードバックって、自分では気づけないことを教えてくれますから。

繰り返しになりますが、わが社の場合は入社後は自由でいいんです。でも面接では「相手の目線」を意識するのが礼儀だと思います。それができるかどうかも、実は見られているポイントなんですよね。

 

人事が見ているのは「過去の真実味」

さて、ここからが本題です。面接で人事が何を見ているかというと、うちの会社の場合は「具体的な経験」なんです。外資だから、超即戦力を求めてるんですよね。だから「やったことがあります」っていうお話は、根掘り葉掘り聞いてます。

その時の環境はどうだったのか、チームの構成はどうだったのか、本人の立ち位置はどこだったのか、そして実際にどんなアクションを取ったのか。こういうことを詳しく聞いていくんです。

たとえばですね、「M&Aに関わりました」って言われたら、こんな質問をします。

  • いつの話ですか?
  • どのような仕事を実際にやったんですか? 言える範囲で教えてください。
  • それに関わったチームの構成は?
  • その中であなたの役割は?
  • どのフェーズで関わったんですか?

「やりました」だけでは足りないんですよ。

状況・判断・行動・結果まで語れるかどうかが鍵なんです。なぜそこまで細かく聞くかというと、面接で語られる経験が、どれだけリアルかを探っているからなんですね。

 

過去の経験から"未来の再現性"を読む

じゃあなぜそんなに過去の真実味を確認するのかというと、理由は簡単です。

過去実際にやったことがあるなら、未来にもやってくれそうじゃないですか。だから過去のことがどれくらい真実なのかを探ろうとしてるんです。

面接って、過去の棚卸しではなくて、未来の予測なんですよね。「この人はうちに入ってから、こういう仕事をちゃんとやってくれるだろうか?」って考えながら話を聞いてるわけです。

 

たとえば、プロジェクトの進行具合によっては残業がめっちゃ多くなるような会社だとしますよね。そういう会社なら、これまで根性入れて残業した事例を聞かれると思います。

  • どのくらいの残業をこなしたか?
  • どうやって乗り越えたか?
  • そのときのモチベーションは何だったか?

こういう「根性の履歴」を確認することで、同じような状況になったときにまたやれるかどうかを見てるんです。実際にやったことがある人は、またやれる。だからこそ、過去の真実味が重要になってくるわけです。

 

SHIZ流・面接準備のポイント

最後に、私なりの面接準備のポイントをまとめておきますね。

 

1. 第一印象は"清潔感と敬意"が基本

身だしなみを整えるのは、相手への敬意の表れです。完璧である必要はないけれど、「この場を大切に思ってます」という姿勢は見せましょう。

 

2. 経験は「状況・役割・行動・結果」で語る

「〇〇をやりました」だけじゃなくて、どんな状況で、どんな役割で、何を考えてどう動いて、どんな結果になったのか。このセットで語れるように準備しておくといいですよ。英語面接のときでも、基本はこの情報を英語にして準備しておけばいいのです。

 

3. 自分の言葉で語れるように、棚卸しと整理をしておく

誰かの受け売りや、履歴書の丸暗記じゃダメなんです。自分の経験を自分の言葉で語れるかどうか。それが真実味につながります。面接前に、自分のキャリアをしっかり棚卸ししておきましょう。

 

4. 面接は"未来の自分"を見せる場

過去を語りながら、未来を描く。「この経験があるから、御社ではこういうことができます」って、未来につなげて話せるといいですね。

 

面接って緊張しますよね。でも、準備をしっかりして、自分の経験に自信を持って臨めば大丈夫です。過去の真実は、必ず未来の可能性として伝わります。

みなさんの面接が、いい形で進むことを願っています。

外資に英語は必要か?──TOEIC500点台で転職した私が今思うこと

「今こうやって無駄な時間を過ごしている意味がわからない」

海外出張時、チームビルディングの場で、海外大卒の若手社員がこう言い放ったことがありました。アジアの同僚たちで集まって、これからチームとして働いていこうという大切な時間だったんですけどね。

もちろん、彼の英語は完璧でした。流暢で、文法も発音も申し分ない。でも、その場の空気を読む力が足りなかった。うちの会社の文化では、そこまではっきり言わないんです。特にチームの和を大事にする場面では、あいまいなまでに丁寧な言い方をするのが暗黙のルールなんですよね。

この出来事が、私に教えてくれました。外資で必要なのは「完璧な英語力」じゃない。英語で「何を通すか」「どう伝えるか」なんだって。

 

昔は「英語は使いませんよ」と言われた

外資に転職したいけど、英語が不安です」

そんな声をよく聞きます。たしかに、今の外資は英語ができないと厳しい。でも、私が外資に転職したときは、TOEIC500点台でした。しかも、英語はほぼしゃべれませんでした。

27歳で今の会社に転職したとき、面接で言われたのは「英語は使いませんよ」。

実際、当時の私の担当は給与業務。社内に外国人は社長ひとりしかいなかったし、わたしが英語を使う場面はゼロだったんです。

前職も外資だったんですけど、日本の商社が50%出資していて、社内は完全に日本語環境。外資といっても、英語が必要ない会社は確かに存在していました。給与担当の経験さえあれば採用された時代だったんですよね。

当時を思い出すと、本当に牧歌的だったなって思います。もうね、書くのが恥ずかしいくらい昔なんですけど、手紙がメイン、やっとテレックス(!)が導入されたってくらいの時期だったんですよ!返信に数日かかっても全然問題なかったんですよね。英語ができなくても、専門性さえあれば仕事は回っていたんです。

今は「どんなポジションでも英語必須」になった

でも、今は全く違います。採用面接でも、どんなポジションでも英語力は必ず確認されます。

理由はシンプルで、スピードと情報量が桁違いになったから。

アジアとのやりとりはchatで即時対応が当たり前。本社には朝メールを送ったら、時差の関係で夜には返信が来て、翌朝にはミーティングが設定されている。資料も会議も英語が基本。外国籍の社員も増えて、廊下での立ち話も英語でするようになりました。

私が入社したころはレポートだって部長が作成していたので、私はデータ作成だけしてればよかったわけですが(しかもLotus1-2-3で💦)、いまは質問があれば直接担当者にchatが飛んできて、即座に答えないといけないんです。

「英語は使いません」なんて言える時代じゃなくなりました。給与担当だろうが、総務だろうが、営業事務だろうが、英語でコミュニケーションを取る機会は必ず出てきます。

私自身、入社当時はTOEIC500点台だったのに、今では海外とミーティングをしたり、日本の報酬制度に沿った設定をグローバルシステムに落とし込む交渉をしたりしています。正直、27歳の自分に「将来こうなるよ」って言っても信じなかったと思います。

 

TOEICの点数より「通す力」が必要

とはいえ、英語力イコールTOEICの点数ではないんですよね。これは本当に声を大にして言いたい。

TOEICの点数を伸ばす努力は、もちろん意味があります。読み書きの力はつくし、基礎的な語彙も増える。でも、ミーティングで発言する力、自分の意見を通す力は、また別物なんです。

たとえば私の場合、グローバルシステムを使っての昇給プロセスについて説明を受けながら、「それだったら昇給のマトリックス表を管理職用と非管理職用の2種類作る必要がある」って主張しなきゃいけませんでした。頭の中では日本の制度と運用、グローバルシステムの流れ、そしてここで理解してもらわなきゃ、しかも英語で…!っていう沸騰状態だったんです。

そういうとき必要なのは、完璧な英語じゃないんですよ。「なぜ必要なのか」を論理的に説明して、「これは譲れない」という姿勢を示す力。つっかえつっかえでも、恥をかいてもいいから、その場で確認すべきことは確認する。通すべきことは通す。そういう根性のほうが大事なんです。

私の上司で、シンガポールに数年赴任していた人がいるんですけど、その人ですら「俺、サバイバルイングリッシュだから」って言ってました。海外の大学を出た人は確かに流暢だけど、日本で大学を出た私たちはサバイバルイングリッシュ。でも、それで十分なんですよね。

実際、海外大卒でペラペラしゃべれる人が、冒頭のエピソードみたいに会議の雰囲気を感じ取れずに失礼なことを言ってしまうケースもあります。英語ができるだけじゃ足りない。会社のカルチャーや場の空気を読む力、そして自分の主張を通す交渉力が必要なんです。

 

英語は"ツール"、大事なのは「何を伝えるか」

英語って、直接的に思えて、実ははっきり言わないですよね。というか、あいまいなまでに丁寧な言い方をするときがある。

たとえば、誰かの提案に問題があっても、「それは違う」とは言わないんです。「興味深いアイデアですね。ただ、こういう側面も考慮する必要があるかもしれませんね」みたいな言い方をする。

外資だからバシバシものを言うイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。「外国人」っていってもいろんな国の人がいるし、会社ごとにカルチャーがある。うちの場合は、調和を重視する文化なんですよね。

だからこそ、英語でも「言いすぎない」「察する」力が必要になります。相手の言葉の裏にある本音を読み取る。空気を読んで、適切なタイミングで発言する。これって、高度な英語力以上に難しいスキルだと思います。

結局、英語はツールでしかないんです。大事なのは、その場で何を通すか。何を守るか。何を伝えるか。完璧な文法じゃなくても、自分の言葉で仕事を前に進められるかどうか。それが外資で生き残るための本当の英語力なんじゃないかなって思います。

 

英語は後からついてくる、まずは「通す力」を

私はTOEIC500点台で外資に転職しました。

入社当時は英語は不要でしたが、外資あるある、それから30年の間に何回か合併があり、社名も当時のものではありません。そしてカルチャーもわたしの立場も変わり、海外出張も増えました。

英語のミーティングでは、最初何を言ってるのか半分もわからなかった。でも、わからないことは「もう一度説明してください」って聞き返したし、自分の意見は片言でも伝えようとしました。恥ずかしかったけど、黙っているよりはマシだって思ったんです。

最初は本当に大変でした。もう嫌だ~とか叫びながらTOEICの勉強もしたし、会議の前には想定される質問と答えを英語で書いて準備したし、議事録を読み返して知らない単語を調べる日々。もうそれしかできなかったもんなあ…。

でも、そうやって続けているうちに、少しずつ聞き取れるようになって、言いたいことが英語で出てくるようになりました。TOEICも880点にまでなりました。

今でも流暢には程遠いです。文法の間違いもするし、言葉に詰まることもあります。でも、報酬制度の交渉もできるし、本社とのミーティングもこなせるようになりました。英語は、使っていれば後からついてくるんです。

もしあなたが外資への転職を考えていて、英語に不安を感じているなら、まずは自分の専門性と「通す力」を磨いてください。

完璧な英語じゃなくていい。TOEIC900点じゃなくていい。恥をかいてもいいから、確認すべきことは確認する。通すべきことは通す。そういう姿勢があれば、外資でもやっていけます。

英語はツール。大事なのは、そのツールを使って何を成し遂げるか。あなたの専門性と経験、そして仕事を前に進める力があれば、英語なんて後からついてきますから。

 

海外出張のときはこういうおもちゃを見るのが好き。海外では馬、多いよね。

 

英語面接は準備9割──優秀な候補者が落ちた理由

ある優秀な候補者の話

「彼は国立大理系出身、30代前半。人柄もよく、経験も十分。日本側では"この人だ"と思っていた──英語面接までは。」

 

もうだいぶん前の話です。
実際にね、すごくいい候補者がいたんです。日本側ではこの人だなって思ってたんだけど、英語面接で撃沈よ。本当になにも準備してこなかったのね。

経験もあり、日本語での面接では人柄もよく、即戦力でもあるし将来の幹部候補にもなると思われた候補者でした。技術的な知識も申し分なく、プロジェクト経験も豊富。まさに「完璧な候補者」だったんです。

 

ところが…海外本社のマネジャーが英語でweb面接をしたわけですが、その候補者は質問が聞き取れなかったんですね。一緒に面接に入った採用部署のマネジャーが質問を訳して、そうしたら彼は英語で答えてはいたんだけど、それもつっかえつっかえ。最後には話せなくなっちゃっていました。

本社側の印象が悪くて、結局採用見送り。本社側はがっかり、日本側の採用部署も人事もがっかりですよ!

 

その人は英語力については自信があって、「なんとかなる」って思っていたようです。私も「大丈夫かな?」と思いながらも、それ以上のアドバイスはしなかったのが失敗だったな。

 

英語面接は"言語力"だけではない

外資を受けるときに、英語が喋れないのに喋れる気がすると思って全然準備してこない人、結構多いんです。特に男性にそれが多い。確かに高学歴だけど、全然仕事で喋ったことがない。だけど文献で専門用語は見てるから喋れるって思うのかな?散々な結果になることはよくありました。

 

まず、やっぱり英語で会話したことがないから、相手の質問が聞き取れないんです。

かつ、聞き取れたとしても専門用語の単語はわかるんだけど、専門用語の羅列だけでは会話にならない。普通、面接って質問を重ねていくじゃないですか?どんどん細かい話になっていくから、英語ができる人だってそこそこ準備してのぞむのよね。

 

問題はここなんです。面接は「一問一答」ではなく「対話のキャッチボール」。相手の質問の意図をくみ取って、適切に答え、さらに会話を発展させていく必要があるんです。

特に、外国人との会話で何が難しいって、文化の違いとか習慣の違いで、思ったこともないようなベクトルから質問されたりするので、その意図をくみ取って会話するのは、もう結構大変。

TOEIC700点取ってても、リーディングとリスニングだけじゃ会話はできないんですよ。

 

外資面接の"変数"の多さ

そもそも面接って、変数多すぎるんです。

  • 面接官の価値観:どんな人材を求めているか、どんな質問をするか
  • 会社・部署のカルチャー:チームワーク重視か、個人の成果重視か
  • 業界特有の慣習:化学業界なら安全への意識、製薬なら規制への理解など
  • 海外文化という未知の要素:そもそも「当たり前」が違う
  • そして言語という壁:理解→思考→表現のすべてを英語で

うちは面接官も化学出身だったりすることが多いので、まあ質問が細かい細かい。技術的な詳細から、なぜその手法を選んだのか、他にどんな選択肢があったのか、失敗した経験とそこから学んだことは何か...と続いていきます。

この複雑な構造の中で、「なんとかなる」はあまりに危険な賭けなんです。

日本語でも緊張する面接で、さらに英語という高いハードルが加わる。準備不足で臨むのは、まさに「無謀」としか言いようがありません。

 

人事としての反省と教訓

優秀な候補者を失ったとき、私自身も反省しました。

候補者の英語力への過信がありました。履歴書にはTOEIC700点と書いてあったし、専門知識も豊富だったから、「まあ大丈夫でしょう」と思ってしまった。

でも考えてみたら、その人が英語で仕事の話をしたことがあるかなんて、確認してなかったんです。論文は読めても、プレゼンテーションした経験があるかはまた別の話。

「大丈夫かも」と思ってしまった人事側の油断が、結果的に候補者にとっても会社にとっても良くない結果を招いてしまいました。

 

それ以来、私は候補者には必ずこう伝えるようになりました:

「英語面接は準備9割です。日常的に英語を使っていないなら、なおさらです」

女性の場合は逆に準備しすぎて、紙に書いたものを読み上げる感じになっちゃったりすることもあるんですが、それでも準備不足よりは100倍マシ。少なくとも伝えようとする意志は伝わりますから。

 

準備のすすめ:英語面接対策の基本

英語面接は、もう準備9割だと思ってください。

まず、書けない言葉は話せないから、自分の英語で書きまくることから始めましょう。

ステップ1:書き出す・・・もちろん自分の英語で!

  • 自己紹介:30秒版、1分版、2分版を用意
  • 志望動機:なぜこの会社なのか、なぜこの職種なのか
  • プロジェクト説明:最も重要な3つのプロジェクトを英語で説明できるように
  • 強み・弱み:具体例とともに
  • キャリアプラン:5年後、10年後の目標

ステップ2:覚える

書いたものを丸暗記する必要はありませんが、キーフレーズは自然に出てくるまで練習しましょう。

ステップ3:話す練習

鏡の前で話すだけでも違います。可能であれば録音して、自分の話し方をチェック。

ステップ4:模擬面接

英語の先生、英語が得意な同僚、オンライン英会話の先生など、誰かに相手になってもらいましょう。

ステップ5:質問の"意図"をくみ取る練習

「Tell me about a challenging project」と聞かれたとき、単にプロジェクトの内容を説明するだけじゃダメ。どんな困難があって、どう乗り越えたか、そこから何を学んだかまで話せるように。

よくある質問パターンを調べて、それぞれの質問の裏にある意図を理解することも大切です。

日常的に英語を使っていない人への特別アドバイス

もし普段英語を使わない環境にいるなら、面接の1か月前からは毎日少しでも英語に触れること。BBC Newsを聞く、TED Talksを見る、英語で独り言を言う...何でもいいから英語脳を少しでも作っておく。

ちなみに普段アジアの同僚と話す機会の多い私も、早口の彼らの英語を聞き取るために毎日Duolingoを欠かしておりません。

 

英語面接は"言語力"より"対話力"

結局のところ、英語面接で問われているのは「英語が話せるかどうか」ではなく、「英語で会話ができるかどうか」なんです。

相手の質問を理解し、適切に答え、さらに会話を発展させていく。時には逆質問をして、こちらの関心も示す。これは高度なコミュニケーション能力が必要です。

TOEIC900点でも面接で落ちる人がいる一方で、TOEIC600点台でも準備をしっかりして、面接官との対話を楽しめた人は通過していきます。

語学力は一朝一夕では身につかないけれど、面接スキルは準備次第で大きく改善できます。

 

あの優秀な候補者も、もし1か月前から準備していたら、きっと違う結果になっていたでしょう。技術力も人柄も申し分なかったのに、準備不足だけで機会を失ってしまったのは、本当にもったいなかった。

反対に、面接では準備した紙を読み上げて入社した女性が、入社後も努力しつづけ管理職に昇格し、かつ当時の面接官から「こんなに英語が上達するとは思わなかったよ」と褒められたという例もあります。

 

外資系企業への転職を考えている皆さん、英語面接を甘く見てはいけません。「なんとかなる」ではなく、「絶対に成功させる」つもりで準備してください。

あなたの専門性と経験は、きちんと伝わってこそ価値があります。英語という壁で、せっかくのチャンスを逃さないよう、しっかり準備して挑んでくださいね。

 

2019年8月の上海出張。これも楽しかったなあ

 

最後の海外出張が教えてくれたこと

2020年1月。

まだ誰もマスクをしていなかった頃、私は出張でドイツにいました。

西部の静かな工業都市にあるグループ本社で、12日間のHRシステムのグローバル導入プロジェクトに参加していたんです。

 

各国の人事担当者が集まって

大会議室にはいくつものテーブルの島があって、ヨーロッパ各国、北米、南米、そしてアジアから集まった人事実務担当者たちが座ってました。

各国から2〜3名ずつ、総勢50名以上いたなあ。アジア勢はインド、中国、韓国、シンガポール、そして日本からは、私ひとり。アジア勢はいつものように一角に固まって座ってましたね。

 

それは新しい統合人事システムの概念と使い方の事例を、ベンダーからレクチャーされる場でした。

 

「この機能は各国の法令に対応できるの?」

「この画面レイアウトは現場で混乱を招かない?」

「承認フローが複雑すぎない?」

 

それぞれの国の制度や文化を背景に、実務的な確認が次々と飛び交います。人事管理、評価制度管理、採用管理を統合したこのシステムは、確かに使い勝手もよさそうでした。でも、各国の法制度や企業文化の違いを前に、「本当にグローバルで統一できるの?」っていう不安も、各国の担当者は感じていたはずです。

 

意外とスムーズだった日本の対応

「日本は労働基準法が厳しいし社会保険など複雑で、勤怠や給与計算は日本独自のソフトを使わざるを得ない」

これは外資系企業の人事なら誰もが考えていることです。

実際、残業代計算の複雑さや安全衛生上のモニタリング、社会保険料の算出方法など、日本の勤怠や給与計算は他国と比べて格段に複雑なんですよね。でも今回のシステムではそういった労務回りはメインじゃなくて、人事管理、評価制度管理、採用管理が中心。

 

なので日本側の対応は意外とスムーズにいきそうでした。私はひとりノートを取りながら、導入後の社内展開を頭の中でシミュレーションしていました。

「現場の混乱は最小限に抑えられそう」。12日間の会議を通じて、その確信は深まっていきました。

 

仕事を超えた絆

でも、この出張で一番印象に残ってるのは、会議そのものじゃないんです。それは、アジアの人事仲間たちとの再会でした。

彼らとは以前から出張や会議で顔を合わせてて、気心の知れた関係だったんです。

シンガポールのリーダーは、いつも的確な質問で会議をリードしてくれる。中国チームは、本社の方針を現地に落とし込む際の創意工夫が素晴らしい。みな優秀で、しかも優しいんです。

 

私はひとりで2週間近くドイツに出張なんて行ったことがなかったから、事前にシンガポールの同僚に「一緒に行動させて~!」と頼んでいたんです。彼らは快く引き受けてくれて、どこに行くにも誘ってくれました。ありがたかった!

昼ごはんは本社のカフェテリアで、夜ごはんも特別な集まりがなければ一緒に誘ってくれて楽しく過ごせました。

週末には「せっかくだから観光もしよう」ってことになって、ケルンに足を延ばしました。大聖堂の荘厳さに圧倒されて、チョコレート工場を楽しんで、彼らの買い物に付き合いながら街を歩きました。

ただそれだけのことだったんだけど、あの時間は本当に楽しかったなあ。仕事で出会った人たちと、仕事を離れた時間を共有できること。異なる文化背景を持つ同僚たちと、同じものを見て笑い合えること。それが、外資の醍醐味のひとつだと、あらためて実感しました。

 

世界が変わった2020年

そして帰国後、世界は一変しました。

2月に入ると新型コロナウイルスの報道が増えて、3月にはWHOがパンデミック宣言を発出。あっという間にリモート勤務体制が整えられて、当然出張は全面停止、会議はすべてオンラインに切り替わりました。

でも、あのドイツでの12日間があったからこそ、困ることはありませんでした。アジアの仲間たちとは、すぐにオンラインでの定期連絡会を始めました。システム導入の進捗状況を共有して、各国での課題を相談し合って、時には励まし合って。

「顔の見えない相手と仕事をするのは難しい」ってよく言われるけど、一度でもリアルに会ったことがある相手となら、そして何度も一緒に食事をした仲ならば特に、「顔の見えない相手」ではありません。オンラインでも十分に意思疎通できます。ドイツで築いた信頼関係が、コロナ禍でのプロジェクト推進を支えてくれました。

 

人事の本質は"人"にある

あれからもう5年。今は、海外出張はほとんどありません。

Teams Meetingでの会議が当たり前になってしまって、出張するほどの大義が簡単には見つからなくなっているのかもしれません。正直なところ、わたしはもう定年再雇用だからいいんだけれど、若手には出張させてあげたい気持ちがあります。世界の同僚と食べたり飲んだり、観光したりする、「無駄な時間」を過ごしてほしい。

外資人事の仕事は、人材開発をはじめとして制度設計や給与計算、システム導入も含めいろいろあるけれど、それだけじゃありません。文化の違いを乗り越えて、言葉を超えて、信頼を築くこと。数字やデータの向こうにいる"人"と話して、笑って、理解して、寄り添うこと。それが大切だし、なにより面白いんです。

 

2020年1月のドイツ出張は、図らずも私の最後の海外出張となりました。でも、あの12日間で感じた最も大切なこと―会社を支えるのは、結局"人とのつながり"なんだということ―は、今も変わらず私の人事哲学の核にあります。

30年の外資人事キャリアの中で、技術は進歩して、制度は変化し続けてきました。でも、人と人とのつながりこそが、すべての基盤なんだと、あらためて思います。それが、私がこの仕事を続けてきた理由であり、これからも続けていく理由なのかもしれません。

 

大聖堂前で地面に各国の国旗を描く移民。いろいろと変化の大きさを感じる。

 

はじめまして

はじめまして。SHIZと申します。

人事として

大卒後半年を経て配属されたのが人事で、そこからずっと30年以上、人事だけです。
今の会社で2社目ですが、1社目は米系、いまは欧州系。どちらも外資系です。

メインの経験は「報酬および制度」(Compensation & Benefit)ですが、日本全体で500名もいない小さな会社なので、採用も研修も実務部隊として担当してきました。
よく考えてみたらM&Aも子会社設立もクローズもやってます...。実務としていろいろやってきました。
2025年に定年を迎え、現在は契約社員として再雇用で働いています。
再雇用というのはモチベーション的には罪作りな制度なので、無くなるのは時間の問題でしょうが、私の世代ではないでしょう。

 

キャリアコンサルタントとして


2020年に資格取得して、社内キャリア研修を頑張ってます。
研修後、希望者にキャリアコンサルティングを行っています。

 

ファイナンシャルプランナーとして


FPとして仕事をしているわけではありませんが、これもキャリア研修に役立っています。

 

 

このブログでは


このブログでは、私の外資人事の経験を書いていきたいと思います。
個人情報をぼやかしながら、それでもどこかの誰かの役に立つと信じ、書けるところは詳しく書いていけたらなと思います。

気長にお付き合いいただけるとありがたいです。